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メディア資料研究会特別講演会「生きる場の思想」を開催いたしました 開催報告

2022.06.10(金)

 メディア資料研究会特別講演会「生きる場の思想」は、番匠健一氏をコーディネーターに、花崎梟平氏、原田公久枝氏をお招きし、末川記念会館とウェビナー併用にて開催されました。はじめに田中聡メディア資料セクター長より開催の挨拶があり、その後、花崎氏、原田氏の講演、休憩をはさみ、質疑応答が行われました。

 

 思想家、著述家として広く知られている花崎氏は、戦後すぐの松川事件、朝鮮戦争時のキリスト者による反戦平和運動、北海道でのベトナム反戦運動、その後生活の中でのウーマン・リブの活動との出会い、アイヌが置かれた状況への気づきと活動、地域の市民運動を結び付ける「地域を開くシンポジウム」、市民の学びの場を作る自由学校、アジアや世界の民衆運動との連携など、これまで携わってきた実践と思想の歩みを振り返りながら、運動の中で得た気づきや学びについて語られました。そして、共生を考える際に依るべき思想の軸として、生存を第一義として生存基盤に根差すことを重視するサブシステンス、民衆同士の対等で平等な関係を目指すピープルネス、精神の根底に自然への畏敬を置くスピリチュアリティの重要性を指摘されました。また、自身の実践とは、様々な課題に取り組む運動の現場に足を運び、そこで考え学ぶこと、共生とは対等、平等での付き合いを心掛け友達になることと語られました。戦後社会の課題の現場の大半に足を運び考えてきた花崎氏から発せられるこの言葉に参加者も聞き入っていました。

 

 原田氏は、はじめに会場いっぱいに響き渡るアイヌの歌の朗唱を披露し、聴衆を魅了しました。そして、花崎氏との出会い、日々の生活の中でアイヌとして直面する差別、そうした歴史と現在を背景に、「アイスクリーム」の看板文字が目に飛び込むとアイヌの中傷看板かとドキリとしてしまうという内面への影響も具体的に語られました。そして「共生」とは、誰が求めているのか、考えてほしいと会場に問いかけました。

 

 質疑応答では、差別をなくすにはどうすればよいかとの問いに、原田氏が、差別意識を持った人がアイヌである自分との交流の中で「出会いなおし」を果たして意識を変えてもらう機会となるよう日々全力で相手に向かっていると述べ、会場からは原田氏の存在に力を得たとの声もありました。また、現代における対話の困難性をどう解決できるかとの問いに、花崎氏は、かつては多くの人が語り掛けて聞かせる力を磨いていたことをあげ、構造的な課題に人々の力で向き合う可能性、また、それぞれの時代の時勢がある中で、再び若い世代が活発になる時期が来ることを期待すると応えました。

 

参加者からは、「共生したいわけではない、という言葉がとてもしっくりきました。アイヌ(やその他の多くの少数派と呼ばれる)の人がただそこに在る事を望むのに、どれだけ言葉と行動を重ねなくてはならないのかそれ自体を直視する事が、「共生」への本質を考えるきっかけになるような気がしました。」(40代、社会人、京都市)、「 共生という大きな言葉を出会い直しのような小さな足がかりから考える、とてもよい会だった」(40代、大学職員、北海道)、「重要なことを肝に銘じながら新しいことに飛び込もうと思います」(19歳、学生、大阪府)、などの感想が寄せられました。

 

 

 メディア資料研究会特別講演会

「生きる場の思想」

日時:202264日(土)13:3016:00

会場:末川記念会館1階講義室およびオンライン(Zoom

発表:花崎皋平氏、原田公久枝氏、番匠健一氏(コーディネーター)

参加者:98名(会場・オンライン)

 

▲会場の様子

▲番匠健一氏、二人おいて 花崎梟平氏、原田公久枝氏

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