立命館大学国際平和ミュージアム 平和教育研究センター Peace Education and Research Institute, Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

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第24回メディア資料研究会を開催いたしました 開催報告

2022.04.14(木)

 第24回メディア資料研究会では、同志社大学〈奄美-沖縄-琉球〉研究センター研究員の森亜紀子さんをお招きして、沖縄・南洋群島を中心に「ミュージアム展示における個人資料・証言の価値」についてご報告いただきました。

 森さんは、これまで沖縄本島を中心に150名余りの方々に南洋群島時代の経験について聞き取りをされてきました。近年のマスメディアでは、南洋群島の経験が「玉砕」などの日本人(とくに沖縄出身者)の戦争被害の体験に特化した報道が行われる一方で、それ以前の日本統治時代についてはしばしば「楽園であった」と美化・単純化され、支配/被支配関係が複雑に絡み合ってつくりだされていた植民地状況が十分に顧みられてきませんでした。森さんのご報告は、日本統治時代の南洋群島の歴史を、とりわけ他の帝国(スペイン・ドイツ・アメリカなど)や他の植民地(台湾・朝鮮・沖縄など)との連関のなかでひも解くことによって、戦争被害の体験にとどまらない南洋群島の植民地体験を捉えなおすものでした。

 たとえばテニアン島は、日本統治時代には沖縄からの移民を中心に南洋興発による製糖業の主力島となっていましたが、そもそも沖縄からの移民は「蘇鉄地獄」とも呼ばれた当時の沖縄の経済的状況を抜きに考えることはできず、また南洋興発創業者の松江春次のアメリカ留学経験や台湾での近代糖業の経営体験など、他地域の帝国・植民地の「技術」「知識」とも密接に結びついて南洋の「開発」が展開された点も見落とすことができないと指摘しました。また、南洋興発がテニアン島の隅々にまでサトウキビ農場を拡張でき、その後米軍が南洋興発の農場を本土空襲・原爆投下のためのB29出撃基地へとすぐに転換できたのは、マリアナ諸島で最大の人口を誇っていたとされるテニアン島が、16世紀にマリアナ諸島を領有したスペインの先住民チャモロに対する政策(反逆者の虐殺、グアムへの強制移住)によってそもそも「無人島」化されたことが大きく影響しているとのことでした。

 そのほか、琉球処分以後差別される側に立たされた沖縄の人びとが南洋群島で「帝国意識」を身につけ、現地住民や朝鮮人に対して差別する側になっていたことや、アジア・太平洋戦争末期に本土空襲のための補助作業に「加担」させられた体験などが、戦争被害の体験に比してこれまでほとんど顧みられてこなかったことの歴史的意味についても、今回のリニューアルで向き合うべき課題だと最後に提起されました。

 

 

24回メディア資料研究会

「ミュージアム展示における個人資料・証言の価値-沖縄・南洋群島を事例に-」

日時:202248日(金)17:4519:45

会場:オンライン(Zoom

発表:森亜紀子氏(同志社大学<奄美-沖縄-琉球>研究センター嘱託研究員)

参加者:16

 

 

▲森亜紀子氏

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