立命館大学国際平和ミュージアム 平和教育研究センター Peace Education and Research Institute, Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

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第22回メディア資料研究会を開催いたしました 開催報告

2022.02.03(木)

 第22回メディア資料研究会では、立命館大学文学部准教授(地理学)の河角直美氏をお招きし、「カラー写真と占領期京都研究」と題して占領軍関係者が撮影した京都のカラー写真と占領期京都の研究の観点から、ご報告いただきました。本研究はこうした写真の収集と研究を進める衣川太一氏(神戸映画資料館客員研究員)との共同研究でもあります。

近年、AI技術を用いて戦前や戦後のモノクロ写真に着色したカラー写真が見られますが、本研究で取り扱っているのはカラーフィルムで撮影された写真です。

 『古都の占領―生活史から見る京都1945-1952』をはじめ、近年は占領期京都の研究が進んでいますが、河角氏は地理学の観点から、占領期資料のGISデータベース構築に携わり、占領期を地図で描くことを出発点に、カラー写真から当時の空間や景観を描き出す研究を進めるにいたったと本研究の経緯を紹介されました。

 衣川コレクションの中でも、占領期に京都に滞在していたNewhard一家のカラー写真は、約200枚に及び、家族の日常や、旅行、子どもの様子、周辺地での占領軍関係者の催し、滋賀や奈良、三重などへの観光など、彼らの生活面を捉えた日常の写真です。

 当館で2018年度開催の第113回ミニ企画展示・第23回京都ミュージアムロード参加企画「占領期の京都」でも一部出品されました。

 被写体となったこの家族についてはあまりわかっていませんが、報告では、これらの写真を読み解く方法として、Googleマップのストリートビュー、古絵葉書、米軍撮影航空写真、残存する建物へ赴いての検証、京都市明細図での照合など、多様な資料と手法を組み合わせて撮影場所を特定した様子を紹介されました。こうした作業を通して、すでに失われた景観や建物の様子、占領軍関係者の生活圏や行動範囲なども明らかになり、占領期の社会や経済環境にも迫ることができます。しかし、占領期研究の中にこれらの写真を位置づける際に忘れてはならないこととして、一つの空間内に敗者と勝者が混在し、その住み分けと接触があった事、そしてこうした構造が今日も日本、そして世界の中で継続していることを指摘され、こうした観点から改めて写真を見ると、そこに映る勝者も敗者も、日常生活を失うことを恐れ、日々の生活へまなざしを向けていた様子を感じ取ることができると述べられました。事実、これらの写真が撮影された1950-52年は、朝鮮戦争の最中であり、勝者の側の占領軍家族も、戦場は遠いものではないという不安を抱えていたことが想像されます。

 質疑応答では、他地域の写真を用いた占領期研究の進展や今後の研究の展開の可能性について議論が及び、東京や名古屋などの占領空間も写真を用いた研究が出ていることや、当時の占領軍関係者は多数の個人写真を撮影しており、今後新資料が発掘され研究が更に展開される可能性を指摘されました。また、写真の観点から、勝者と敗者それぞれはどう見えるのか、敗者の側でも経験が持つ意味が異なる状況をどう捉えることができるのかなどの質問もあり、河角氏は、京都の中にも占領軍の中にも階層構造があり、人々の経験を大きく左右していたことを指摘されました。

 

 

22回メディア資料研究会

「カラー写真と占領期京都研究」

日時:2022117日(月)17:30~19:30

会場:オンライン(Zoom

発表:河角直美(立命館大学文学部准教授)

参加者:12

 

 

 

▲河角直美氏

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