立命館大学国際平和ミュージアム 平和教育研究センター Peace Education and Research Institute, Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

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平和博物館における戦争体験継承プロジェクト研究会を開催しました 開催報告

2021.11.05(金)

 20211029日(金)、第11回ワークショップ「戦争体験を第四世代(次世代)に語り継ぐ平和博物館―平和教育学の観点からー」を開催しました。

 教育社会学、平和教育学を専門とされる村上登司文氏は、平和教育や平和博物館の調査研究をされていますが、当館のボランティアガイド講座も修了され、展示内容や実践にも詳しいお立場です。今回は、今後の平和博物館に何が求められるのか、平和教育学の観点からお話しいただきました。

 日本の平和教育や平和博物館は戦争体験の継承を軸にしてきましたが、初めに、戦争体験に関わる世代分析がなされました。戦争者を第一世代(~1945年生まれ)とすれば、戦後に戦争体験世代の子として生まれた第二世代(1946年~1975年生まれ)、豊かさの中で育った第三世代(1976年~2005年生まれ)、そして現在は第4世代(2006年生まれ~)まで来ています。世代変化の影響は著しく、学校における平和教育でも、2000年代に入ってからは祖父母の戦争体験を題材とした授業が減り、戦時中の学校の様子を扱う機会が増えていることが示されました。教員も、第三世代が中心的な担い手になっています。

 村上氏によれば、こうした状況の中で平和博物館に求められるのは、情報化への対応と当事者性の形成です。

 情報化の実践は、昨今のデジタル化の進展と継承の担い手の変化が相まって進展しつつあり、証言者から伝承者へ、体験記から証言アーカイブの利用へと継承のエイジェントが転換しつつあり、平和博物館がこの状況に即した活動に転換することが求められます。

 当事者性の形成については、戦争被害への共感的な理解への情的素養を養う情操的土台作りから、被害者の平和形成への想いも共有する想いの共有の段階、継承活動の意義を認める意義の理解の段階、そして継承者に出会い、その活動の輪を広げようとする継承主導者に至る段階と、7段階の形成過程モデルを示されました。(詳しくは、村上「戦争体験を第四世代(次世代)に語り継ぐ平和教育の考察」『広島平和科学』40号、20193月 33-50頁)

 質疑応答では、共感的理解を持つにいたる関心をどう醸成するのか、当事者意識の形成にはどのような工夫が必要か、平和を創る意識につなげるには何が必要か、などの質問が寄せられました。

 村上氏からは、共感力の醸成には学校や家庭などで大事にされる体験が不可欠であること、展示では子供が身近に感じられる題材を扱うなどの工夫が考えられること、平和を創る意識につなげるには、国際的にも協力しながら平和を創る仲間づくりが、重要な役割を果たすとのリプライがありました。

 また、福島への学生引率経験のある参加者からは、証言を聴くことで学生の意識が変わり、共感力が身に着いたとのコメントも寄せられました。

 

平和博物館における戦争体験継承プロジェクト研究会

「戦争体験を第四世代(次世代)に語り継ぐ平和博物館―平和教育学の観点からー」

日時:20211029日(金)17:00-18:40

場所:オンライン(Zoom)

発表者:村上 登司文(京都教育大学 教授)

参加人数:12

 

 

▲村上登司文氏
 

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