立命館大学国際平和ミュージアム 平和教育研究センター Peace Education and Research Institute, Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

お知らせ NEWS

第14回メディア資料研究会を開催しました

2019.11.29(金)

▲資料閲覧の様子


 今回のメディア資料研究会は、アメリカ対外関係史、国際関係史がご専門の藤本先生をお招きして、当館所蔵の陸井三郎氏、橋本雅弘氏関係資料を中心に、ベトナムにおける戦争犯罪調査日本委員会(以下「戦犯調査日本委員会」)の活動についてお話いただきました。先生は、陸井三郎氏資料の当館への寄贈に直接かかわり、また橋本雅弘氏にもインタビューなさっています。そうした経緯も含め、戦犯調査日本委員会の活動を実証的、歴史的に位置づけるものとして両資料を位置づけ、報告して下さいました。

 戦犯調査日本委員会は、哲学者バートランド・ラッセルが提唱した、ベトナムにおけるアメリカの戦争犯罪を裁くための国際戦争犯罪法廷(ラッセル法廷)に呼応して、1966年に組織されました。ベトナムには7次にわたって現地調査に入り、ラッセル法廷、新ラッセル法廷に代表を派遣しています。

 陸井三郎氏は戦犯調査日本委員会常任委員として活動し、第1次、第5次と2回にわたりベトナムに調査へ赴いています。ラッセル法廷で証言し、1972年のパリ世界集会などにも参加しています。陸井資料には現地調査の写真、映像が含まれており、8mmフィルムに撮影された映像には、陸井氏の参加した第1次(1966年)と第5次(1972年)の調査の様子が記録されていました。非人道的な大量虐殺兵器、アメリカ軍よる非軍事施設の攻撃の様子などが収められています。陸井氏がこうした資料をもとにしてラッセル法廷で証言し、判決を導き出すための重要な役割を担ったことがわかります。

 医師でもある橋本雅弘氏は第2次調査に参加し、東京で行われた民衆法廷、東京法廷でその調査結果を医学的側面から報告、証言しています。橋本氏資料もまた現地調査資料を中心に構成されています。加えて、橋本氏資料群とは別の形で当館へ収蔵されていた16mmフィルムの映像資料「アメリカの戦争犯罪―東京法廷は告発するー」も紹介いただきました。第2次調査団における橋本雅弘氏の活動と東京法廷での証言が映像化されたものです。

 会場からは、「ベトナムに平和を!市民連合(べ平連)」の活動とは結びつかなかったのか、今のアメリカ(と日本)にとってベトナム戦争は遠い昔の話ではないか、といった意見も出ました。べ平連の活動とは、なぜか直接はつながらなかったことや、アメリカではベトナム戦争の資料の検証がされはじめていること、一方でベトナム戦争に従軍した兵士や家族をねぎらい、顕彰するような式典も計画されていること、アメリカでこうした戦争犯罪による被害がどう伝えられるのか注視したいなど、議論は続きました。

 先生は、調査団に加わった方々の資料は散逸しており、当館や法政大学ボアソナード研究所などに一括所蔵されている資料の重要性を指摘しておられました。北ベトナムに対する爆撃の実態については未だ研究途上にあり、今後東京法廷関連資料とあわせて、ベトナム戦争時における日本の加担の実態、反戦運動などと関連付けながら研究が進んでいくことが望まれます。当館でも常設展示で取り上げるテーマでもあり、引き続き取り組んでいく課題となりました。

 研究会を機に映像資料のデジタル化を行うなど、収蔵資料を包括的にとらえ、資料がどのように集積され、収蔵されるに至ったのかがつぶさにわかったことも、博物館として貴重な機会となりました。

 

14回メディア資料研究会 

演題 「ベトナムにおける戦争犯罪調査日本委員会」調査団の活動―陸井三郎資料・橋本雅弘資料を中心に― 

日時 20191115日 1700-1930

講師 藤本 博(南山大学アメリカ研究センター客員研究員)

参加人数 21

 

▲藤本 博氏

 

 

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