立命館大学国際平和ミュージアム 平和教育研究センター Peace Education and Research Institute, Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

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6月22日(金)、科研費挑戦的萌芽研究「平和博物館における戦争体験継承のための展示モデル構築」プロジェクトの第8回ワークショップ「継承の力学ー広島における「被爆体験」の遺産化とその影響」を開催しました

2018.06.28(木)

 

 6月22日(金)、第8回ワークショップ「継承の力学ー広島における「被爆体験」の遺産化とその影響」を開催しました。広島の戦後史が専門で、これまでフィールドワークの中で百人以上の被爆者から聞き取りを行ってきた根本雅也氏に、近日出版の著書『ヒロシマ・パラドクス―戦後日本の反核と人道意識』を基に発表いただきました。
 広島では長らく被爆体験を教訓化し、集合的な経験とすることの重要性が唱えられてきました。これは日本全体のことでもあります。修学旅行を始め、様々な機会を通して被爆者の体験を聞く「被爆体験の継承」が行われています。
 発表の中で根本氏は、この歴史的背景を明らかにし、原水爆禁止運動の分裂に伴いそこにある政治的立場の違いを乗り越えた国民的な運動の創出、平和教育の手段としての語り部の活用、世界的な反核運動の盛り上がりの中で体験を語る活動の組織化が進み、その中で、被爆者が社会的な使命を得て主体化されていくとともに、分かりやすさなどが求められることで語りが聞き手に従属させられていった側面があることを明らかにされました。その結果、証言の画一化や、なぜ、被爆体験を聞くことが重要であるのか問うことがないままに「被爆体験」を「遺産」とする継承の目的化が生じている状況があります。これに対して根本氏は、被爆体験を聞くことで、被爆者の立場を知り、その意味を考え、自らの立場を問い続けることの重要性を語られました。
 今回の発表は、平和博物館の活動と本プロジェクトの取り組みに対する本質的な問題提起です。議論の中では、博物館が政治性抜きに記録を残そうとすることで政治性を漂白することになる問題、社会に開かれた施設として「分かりやすさ」が必要である一方それが戦争体験の語りに制約を加えることをどうすれば良いのかなど、発表内容を具体的な博物館の実践でどのように受け止めた展示を作ることができるか話し合われました。

 

科研費挑戦的萌芽研究「平和博物館における戦争体験継承のための展示モデル構築」
第8回ワークショップ
「継承の力学ー広島における「被爆体験」の遺産化とその影響」
日時:2018年6月22日(金)17:00~19:00
場所:立命館大学国際平和ミュージアム 2F会議室
報告:根本雅也(衣笠研究機構プロジェクト研究員・国際平和ミュージアム平和教育研究センターリサーチャー)
参加者:9名

 

根本雅也

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