お知らせ NEWS
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2017.01.26(木)
2017年1月26日(木)、第4回メディア資料研究会が開催されました。今回は当館学芸員篠田裕介が、「国際平和ミュージアム収蔵資料に見る軍事郵便研究」と題して、これまでの軍事郵便研究における論点をまとめ、それを踏まえて当館の軍事郵便資料を紹介しました。
軍事郵便とは、1894年の日清戦争時に成立した制度を基に、戦地や軍事施設などから差し出される郵便(無料)と逆に内地から差し出される郵便(有料)のことを指します。戦時において膨大に生まれる資料ですが、残るのはそのごく一部にすぎません。
これまでの軍事郵便研究では、1:検閲の問題、2:残存する軍事郵便から歴史を一般化することに対する当否、3:内地発戦地宛の書簡が残りにくい、4:文字・文章が読みにくい、5:膨大に交わされた軍事郵便を通じた社会、文化のありようを「軍事郵便文化」として総合的に捉えることが必要、といった点が問題となっています。今回の報告では、これらの視点を踏まえ収蔵資料の中から検閲を逃れた軍事郵便、兵士たちが家族らに宛てた多様な消息の便り、数少ない内地から送られた軍事郵便など14件の資料が紹介されました。
検閲を逃れた例として紹介された池垣資料では、普通郵便を利用する、自分が検閲者という立場であったこと、暗号の利用などの条件で軍事上の機密事項である行動予定を家族に伝えることが出来ていたことが読み取れます。
当館に収蔵されている軍事郵便の中で最も多いのは、家族や親戚へ近況を伝えるものです。これらの郵便は、用件や事件が記されることは少なく、自らが元気にいることを伝えるものがほとんどです。これには差出人が検閲を意識していたことに加えて、手紙の内容以上にやりとりにより繋がりが重要であったことが伺えます。
さらに、戦地から民間人が発送した軍事郵便、禁じられていた封書の使用などから軍事郵便制が戦時下で必ずしも規定どおりに運用されてない例を通じて、戦地における規定や法令の変化についても示唆されました。また内地から個人だけでなく地域が差出人となった慰問文などもあり、当館の軍事郵便資料の多様性と今後の研究の可能性を感じる研究会となりました。
第4回メディア資料研究会
日時:2017年1月26日(木) 17:30~19:00
場所:立命館大学国際平和ミュージアム 国際平和メディア資料室
参加者:12名(報告者1名、教職員4名、学生5名、学芸員2名)
報告者:篠田裕介(国際平和ミュージアム学芸員)
報告題目:「国際平和ミュージアム収蔵資料に見る軍事郵便研究」