お知らせ NEWS
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2019.10.07(月)
自衛隊基地の地域社会史プロジェクト 第4回研究会では、NPO法人ピースデポ(以下、ピースデポ)特別顧問の梅林宏道氏にご自身の反基地運動の経験とピースデポの活動について報告していただきました。梅林氏は、神奈川県相模原市にある米陸軍相模総合補給廠への米軍戦車阻止闘争をはじめとし、反トマ全国運動(トマホークの配備を許すな!全国運動)、太平洋軍備撤廃運動(PCDS)などの運動に携わってこられました。
1972年の米軍戦車阻止闘争は、ベトナム反戦の流れに位置づけられる反基地運動であり、米陸軍相模総合補給蔽にて修理された戦車がベトナムへと送られるのを阻止する抗議闘争です。反トマ全国運動は、1983年の米国の海洋発射巡航ミサイル・トマホークの配備開始を受け結成され、全国の反基地市民運動ネットワークとしても機能しました。太平洋軍備撤廃運動(PCDS)は、1985年に誕生したミサイル・トマホークの配備を阻止する太平洋規模の反基地運動のネットワークであり、反トマ全国運動とも連携しました。
梅林氏が立ち上げたピースデポは、1997年11月23日に設立総会が開かれ、1998年1月1日から組織の活動が開始されました。ピースデポの活動の大きな特徴の一つが、“情報に依拠した運動”という点です。たとえば、米国のアフガン攻撃を支援するためにインド洋で行っていたはずの海上自衛隊による米艦への給油が実はイラク攻撃に従事する米空母への給油であったことが、ピースデポの調査によって明らかになりました。米情報公開法を駆使し、一次資料にあたるというピースデポの地道な調査活動が、戦争政策への批判世論形成につながり、基地と戦争との関係を可視化させたのです。この調査に基づいた情報とその分析を提供するというピースデポの活動は現在も続けられており、核兵器廃絶に関する政策提言を行ったり、北東アジア非核兵器地帯の設立を目指し、日韓連携のためのコーディネートを行ったりするなど、さらに広がりをみせています。こういったピースデポの活動が、平和運動に貢献しているということが梅林氏のお話からよく伝わってきました。
第二部の全体討論では、まずコメンテーターの大野光明氏(平和教育研究センターリサーチャー)から、活動の説明やそこから得られた知見について報告がありました。
その中で大野は、京都府京丹後市丹後町宇川地区における米軍基地建設を調査した経験から、米軍基地の存在が地域の人びとの思考や態度に影響を与えていることを指摘しました。また、歴史的な視点から闘争運動を考えていく必要や、基地や軍隊を容認する社会がどのようなイデオロギーを持っているのか、軍隊が内包する差別や貧困の問題など、さまざまな観点からの提言がなされました。さらには、闘争運動に携わった人たちの中から新しい芸術や文化活動が生まれてきたことも紹介されました。梅林氏は、基地というのは単独で存在するのではなく、多様な機能が有機的につながる地理空間であると述べ、それゆえに個々の基地単独での議論ではなく、多角的な視点からこの問題を議論していくことの重要性が示されました。会場からも多くの意見が出て、活発な討論となりました。
戦争の記憶の継承だけではなく、このような市民社会からの発信を軸とした平和運動を次世代に伝えていく必要があるが、国際平和ミュージアムはその良い手段となり得るのではないかという言及もあり、当館の今後の取り組みにも参考となる貴重な報告となりました。
自衛隊基地の地域社会史プロジェクト 第4回研究会
日時:2019年9月28日(土)15:00~18:00
場所:立命館大学国際平和ミュージアム 2F会議室
登壇者:梅林宏道(NPO法人ピースデポ特別顧問/長崎大学客員教授)
大野光明(滋賀県立大学人間文化学部准教授/研究センターリサーチャー)
参加者:19名